正月空間体験

そうそう、お正月休暇に、こんな建築を見た。

東京在住の次男。お正月は大阪の我が家でお屠蘇をしたが、東京に戻るにあたって、新幹線の指定席がいっぱいだという。自由席を廃止し、指定席だけになったらしい。早めに指定席を予約すればエエだけのコトだが、ひとりものの身軽さ故に、気が向いた時間に新幹線の自由席で座って帰りたい。確かにそういう気分も理解出来る。指定席で、へんなひとと横になるのも辛く、自由席で座って帰るっていうのがエエのだというが、お正月の東海道新幹線は、そういう気分の人は排除された。混雑を避けようとする企業側の意図も理解できなくはない。

奥方の福島県の実家に帰省するのがお正月の慣わしになっている長男一家。大阪への帰路の途中で、一泊だけどこかで合流しようということになった。女性どうしで候補地があーだこーだと話し合われ、結局、軽井沢に落ち着いた。アウトレットで買い物をする女性陣とmagos一緒にスキーをする男性陣。という構図になった。で、次男は、大阪から軽井沢に行く私が運転する車に便乗した。軽井沢から新幹線で東京に戻るほうが、まだ座席も取りやすいので…という。

大阪から車で軽井沢に行くのには、諏訪湖のあたりで高速道路を降りて、峠越えをするのが、なんとも面倒くさい感じがするルートなのだ。雪の時はその峠越えがちょっと心配でもある。2年程前に同じルートを経験した時、偶然、小諸で丸山珈琲の店舗を発見し、そこがエエ感じだった。それで、そこで珈琲を飲む事を楽しみに運転することにした。板張りの片流れ天井のゆったりした空間。乱貼りの石の床が空間を特徴付ける。フレンチプレスコーヒーがなによりも特徴的だし、ここにしかない空間と珈琲が、わりと単価が高い珈琲でも、お客さんに満足感を与えるし、そういうビジネスモデルとして、なかなか面白いとおもう。帰りがけには、珈琲豆を買って帰りたい気分にさせるのだ。上手だな。

軽井沢ザ・プリンスホテルの設計者は清家清だという。そこでディナーとモーニングを食べる。2本の柱だけで支えられたスペースフレームとダウンライトの組み合わせが、とってもモダンだが、壁のレンガと程良いスケール感と座席家具の高低差とが相まって、近未来的すぎず、落ち着いた感じがするし、結婚式場の新郎新婦のような気分で階段から降りていく時のスペースフレームとの関係性が楽しい。はめ殺しのガラスとスペースフレームの納まり方と池と樹木と浅間山の景色という建築的な関係性が素敵だなとおもう。唯一無二の独特の高級感だな。


今回の密かな楽しみは、地下の「Bar」に行くコトだった。こんな素敵なBarがあるとは、全く知らなかった。高さ関係が巧みなコンクリートのヴォールト天井とレンガの組み合わせ。壁の鏡が奥行き感を錯覚させる。銅板の照明器具とテーブルとイスの素材感と暖炉の関係性も居心地の良い雰囲気を演出する。また訪問してウィスキーを飲みたい気分にさせられる。そんな空間体験だった。

ちなみに、次男は軽井沢から東京までの新幹線も案外満員で、グリーン席しかなく、予約を入れようかと躊躇した途端に、誰かに先取られ、仕方なくグランクラスの予約になったらしい。それが、とっても快適で貴重な移動空間体験だったという…..。ま、そんな、お正月空間体験だった。