クロヨン

クロヨンを見た。先週の社員と協力会社との研修旅行は、立山黒部アルペンルートで、長野県の扇沢駅からトロリーバスに乗って、黒部ダムに到着し、220段の階段を登り、展望台から眺めると、その壮大さに圧倒された。幸い天候にも恵まれて、残雪の残る山々、森、深緑の水面、それらを背景にした、コンクリートの塊。人間の力って凄いなぁ…..と、感動する。

天候のお陰でもあるのだろうが、バスの移動中、プロジェクトX挑戦者たちの黒四ダムを見て、輸送トンネルを造る苦労と破砕帯を突破する諦めない挑戦を見ると、なんとなく目頭が熱くなり、また、コンクリートのダムを造るために、クレーンとバケットでコンクリートを搬送する難しさとその作業量の多さに、凄いなぁ…..とため息をついていたが、そんなビデオを見た後だけに、コンクリートの塊の黒四ダムの背景にある、ものづくりとしてのクロヨンに、心が動かされていたからだろう。

それにしても、コンクリートの造形としても、想像していた以上に、カッコ良かった。ゆるやかなアーチ形のダムの両端に、ウィングが張っているからカッコエエのだろう。ウイングとアーチのダムが接する角が、裾野のように張って広がっていく立体感が、雄大に感じさせるのだろうか。工事が始まってから両端の岩盤でアーチを支える力が足りないからウィングを付けたらしいが、コンピュータで図面を書けない時代に、おもいのほかオーバーハングした3次元的な立体造形のアーチとウィングが造れたのは、設計士や現場監督や職人さんたちの現場力が凄かったからなのだろう。トンネルを掘るひとたちだけでなく、型枠大工や鉄筋工だって、苦労したに違いない…..。

トロリーバス、ケーブルカー、ロープウェーと、乗り物を乗り継ぎ、雄大な山々の景色とその変化を眺める楽しさ。というか、ただ乗り物を乗るコトそのものが楽しい…..という子供の時の楽しみ方を想い出す旅でもあるのだろう。室堂平で、雪の壁を体験したが、なによりもの驚きは、黒部も室堂平も外国人観光客の多さだった。ここが、こんなに、インバウンド人気なのか!と驚くとともに、「ディスカバージャパン」なんていう古いコトバを想い出した。インバウンドの人気の場所によって、日本人が、日本の良さを見直し、再発見する時代なのだろうか…..。

そういえば、研修旅行の一日目は、黒澤明の夢の最後のシーンのロケ地にもなった、大王わさび農園の美しい湧き水の上をゴムボート進んだが、黒部ダムは、破砕帯の水に苦しめられて、あらこちらで、水が流れる様子を垣間見、「水」とういのが、日本的なキーワードのひとつなのだと、気付かされた旅でもあった。

そうそう、内藤廣設計の岩崎ちひろ美術館も見学したが、美術館に行くと、展示物より、建築が気になり、それが、大事なテーマのひとつであり、この研修旅行の目的なのだが、特別展として、「ヒロシマ」というテーマの展示があり、原爆のコトを書いた当時の作文と、遺留品の芸術的な写真と、絵が、コラボして展示してあった。その展示室を、うちの20代の若い二人の大工が、仲良く一緒に並んで、その原爆についての作文をじっくり読み、なんともいえない表情と立ち居振る舞いをする、その二人の若い大工の姿が、とっても印象的だった。

クロヨンも、クロサワも、若いダイクスも、なんらかのハートに突き動かされて、ものづくりを続けているのだろうな…..。