「凧揚げ」

淀川河川敷で凧揚げをする。「まちのえんがわ」木工ワークショップの講師ヤグラさんのお誘いで、淀川河川公園西中島地区で凧揚げとストリートオルガンをやっているので時間があれば…..というお誘いだった。マゴ二人とそのお母さんと奥方と私の5人で出向く。

河川敷の無料駐車場に10時30分に到着すると満車になる一歩手間だった。大規模なバーベキュー広場があってそこを目当てに多くの若い人達がやってくるらしい。コロナ禍による新しいライフスタイルがバーベキューなのだろう。ほんとうにこんなに人が来るのだろうかと疑っていたら、お昼には満杯になって周辺には風にそよいで焼肉の匂いがたちこめていた。そのバーベキュー広場を横切ってテント広場で凧揚げとストリートオルガンを催していた。

ヤグラさんと他二人のストリートオルガン製作者が演奏し、どれも手造りのストリートオルガンで、独特の音色と和音を奏で、とにかく良く出来ているので感心するばかりだった。道ゆく数人が興味深く立ち寄り滑車をぐるぐるまわして演奏を楽しんで、毎回ささやかな拍手につつまれ、ノスタルジックで穏やかな公園風景を醸し出していた。その演奏している背後のシロツメ草が生えている広場で凧揚げをしている「日本の凧の会」の狭川さんを紹介してもらう。なんでも大阪で唯一の手造りこんにゃくを作る83歳になる職人さんだそうだ。

和凧の背面を見せてもらうと、あまりにも骨の作り方が良く出来ている凧なのでいろいろ質問すると丁寧に教えてくれた。手漉きの和紙でてきていて強度があるという。骨になっている竹をみると細くてしなやかそうなので、聞くと、エジソンが使ったのと同じ「真竹」だという。いろいろな竹があるが、真竹がもっともしなやかで強いのだという。凧糸をみるとフツウの凧糸より細くて軽くて強い上質な凧糸だった。全ての部材を軽量化して製作しているという。

今日は生憎、風が吹かない淀川河川敷だったが、時折吹く弱い風を捉えて、快く笑顔でマゴ達に凧糸を持たせてくれる。弱い風でも揚がる和凧なのだそうだ。マゴ達が飽きると、ワタシも30分間ほど凧を揚げる。久しぶりだ。しなやかな竹のお陰で、右人差し指に絡む凧糸を通じて、凧に伝わる風の力が心地良く感じる。微妙に変化する風の力を凧糸を通じて指に感じる、その風の感覚が楽しいし好きだなぁ。

木村工務店の3階建社屋に屋上があり、お正月に、その屋上から何度か凧揚げをした。ゲリラカイトといわれる西洋凧が多かったが時には奴凧といわれる和凧も新聞紙で足を付けて揚げた。親父もお袋も兄弟3人一緒になって楽しんだ記憶が残る。長男が生まれて小学生頃までお正月の楽しみのひとつだった。大阪湾からの安定した西風が吹いて、東の生駒山に向かって凧が天高く揚がるが、時には凧糸が切れて、どこかに飛んでいってしまい、自転車で追いかけて電線にひっかかった凧を何度か回収した。今から振り返れば大胆なことだったが、まだ大らかな時代だったのだろう。もはやそんなリスクのある遊び方ができる時代ではない。そういえば、凧揚げはお正月でなく4月5月6月が良いのだと狭川さんが仰っていた。

それにしても淀川河川敷から梅田方面のビル群を眺める風景もエエなぁとおもう。この光景のなかに梅田スカイビルの存在は際立っていて、もしこの建築がなかったら、もっと味気ない光景だったのかもしれないとおもう。シロツメ草の上でお昼ご飯を食べて、ゴロッと仰向けに寝っ転がりながら「風の力」と「建築の力」というのを考えてみた。