月明かりと照明器具

春のような陽気だった今週の夜。居間の電気を消して、寝るために寝室に向かおうとすると、床にほのかな明かりがあって、不思議におもう。電灯消したはずなのに。振り返って、中庭の窓越しに空を見上げると、お月さん。久しぶりにお月さん見たかも。お月さんの光ってなぜ気分を独特な静けさにさせるのだろうか。なんとなく月明かりに照らされた自撮り写真を撮影した。稲垣足穂的に、月が屋根をコロコロ転がって、うちの家に飛び込んできたような気分だった。お月さまに背中を押されているワタシ。

 

土曜日午後。大阪市立デザイン教育研究所。通称デ研の学生さん男女8名が2人の先生に引率されて「まちのえんがわ」へお越しになった。3日ほど前に、唐突に、生徒さん連れて遊びに行きますわ。っていうメッセージを頂戴し、丁度、予定が空いていたので、気軽にエエですよ!とお答えしたものの。当日、照明デザインを学ぶ授業で、「まちのえんがわ」のコトや「工務店」のコトも生徒さんに説明してやって下さいと、無茶振りされて、全く準備してなかったので戸惑う。即興的に、うちの家の照明器具でも見てもらって間を持たそうと思いついた。

それに、うちの奥方が、VUITTONやHERMESの鞄を買ったコトを自慢げに話しをするような感覚で、ルイスポールセンのアーティーチョークを自分のお金で買ったのよぉ!と、ちょっと自慢げに語る姿を見てもらいながら、実物の照明器具を見るシチュエーションが面白そうなので、やってみるとその通りの盛りあがりになって、まずはヨカッタヨカッタ。

それよりも、もっと盛りあがったシチュエーションがあって、うちのダイニングテーブルの椅子は、ハンスウェグナーがデザインした別々の種類を8脚置いているのだけれど、それも、奥方が、30年ぐらいかけながら、ちょっとずつ集めたのよぉ!っというブランド自慢的要素で、ひとつのネタ話的に語るくだりが必ずあって、それでちょっと盛りあがった。同伴していた先生の薦めで、生徒さんがその椅子に座る姿を見ているうちに、思いついた。偶然、8人の生徒に、8脚の椅子。椅子取りゲーム的に、一脚座っては右に移動して、8個の椅子の座り比べをしてみよう!なんていう、学生っぽい遊びをすることになった。はい次移動。はい次移動。なんて8回左回りを繰り返して座り心地の感想を語り合った。全部座り終わってどの椅子が心地良いか聞くと、「ザ・チェアー」が一番人気だった。やっぱりなっとおもう感覚とともに、へぇー若い子でもこの椅子がエエのかぁ。みたいな少々の驚きもあって、なんだか楽しかった。

 

その後木村工務店の3階の会議室で、「まちのえんがわ」と「木村工務店」と「木村家」の説明をし、生徒さんひとりずつの「照明」に関するプレゼンを聞いた。インターネットによる画像取得とパソコンを使いこなす能力が18歳にしてもはや充分出来ている世代なので、なるほどねぇと感心させられたりして。そうそう、いま、これを書いていて、ふとおもったが、照明って、焚き火から生まれた。松明みたいに。っと書かれてあるが、「月明かり」を「家の中に閉じ込めたい」とか。「いつでも月明かりを家の中でオンオフしたい」みたいな感覚もありそうで。ローソクなんて、松明の延長線上でもあるが、月明かりを家の中に閉じ込めたい延長線上でもあるような。そんな感覚。

こんなふうに考えてみたくなるのは、その日の春っぽい陽気と、18歳の若いエネルギーのプレゼンを浴びたからだな。