ケンチクイス的。
今日の日曜日の「まちのえんがわ」ワークショップは、建築家のヤベさんによる、「ケンチクイス」のワークショップだった。毎年、恒例のヤベさんによるレクチャーでは、「ケンチクイスは、誰でもが、最高の完成度で造れる椅子」という、アマチュア的椅子づくりに対するコンセプトの説明から始まって、有名な椅子の多くには、曲線が使われていて、それは、椅子を造る技術のなかでも、道具と技術と時間が必要な、まさしくプロ的な技術だとおもうのだけれど、このケンチクイスには、「曲線がない」という解説が続き、というより、曲線を使わない椅子を造るというのが、アマチュアでも製作し易い椅子ということになるのだろう。
アマチュアがプロのテクニックに近づけるように、修練を積んで、まるでプロ並みな椅子を制作する。というアプローチもあるが、アマチュアがアマチュア的技術力の範囲で、完成度の高い椅子を制作する。というアプローチもあるわけで、それには、「設計思想」が必要なのだろうし、「ケンチクイス」というのは、アマチュア的ものづくりに、デザイン性を付加する、ものづくりの、あるひとつのアプローチを模索する試みだともいえる。
「曲線がない」。といっても、直線だけで出来ている、有名な椅子も数多くあって、そんな椅子が、プロが製作する椅子として、そのデザインや仕上げが、どんな技術によって完成されているのか。という解説が続いて、それをケンチクイスの3つのルールとして説明があった。まず、「仕口」という、木と木を組み合わせる高度な技術によって、椅子の強度が保たれている、その技術を使わないというのが、「仕口がない」というルール1だった。なので、ビスと木工用ボンドだけで、強度が保てるデザインと製作方法の椅子が、ケンチクイスだともいえる。
「トメがない」。というルール2があり、これは、木と木の角を直角に繋ぐ時に、両方の木を45度の角度でカットし、直交する2本の木を直角に繋ぐ技術で、もちろん、修練が必要な技術なのだけれど、そのトメという技術を使わなくても、デザイン性がある椅子を設計するのが、ケンチクイスのルール2でもあるのだろう。
「仕上げがない」。というのがルール3で、ペーパーで磨いたり、ニスを塗ったり、角をRで削ったり。という技術を使わずに、エエ感じの素材感になる椅子をデザインするのが、ケンチクイスのルール3だというわけで、今回は、ラワン合板を使って、塗料は全く使わず、ペーパーで磨くこともなく、製作することになった。
新築やリフォーム工事で、積極的に、DIYをする、アマチュア的なものづくりの手法を取り入れて、コストダウンとともに、独特の雰囲気になる空間を作っていこうというのが、最近のブームでもあるが、このケンチクイスは、アマチュア的な技術だけで、誰もが造れる、デザイン性のある椅子を設計してみよう!という提案でもあるわけで、DIYで、デザイン性のある、空間や家具を設計できる余地と可能性は、まだまだありそうで、ヤベさんのケンチクイスの設計図を見ると、「DIYで造れるデザイン性のある設計」というアプローチに、奥深さを感じるわけで、これからは、単なるDIYだけではない、「ケンチクイス的デザイン性があるDIY」が求められる時代なのかもしれない。
投稿者:木村貴一