ブルース的

地鎮祭があった土曜日。左横には、昨年施工したマクセルさんの「くせがあるスタジオ」があって、右横には、新幹線が猛スピードで通過し、時折パンタグラフからパチン!というスパーク音が響く。カッコエエような。怖いような。で、パンタグラフにちょっとした興味がわいて、調べると、新幹線N700Sは、バッテリー自走システムがあって、パンタグラフを降ろして走行できるという。新幹線からパンタグラフがなくなる日がくるのだろうか…..。そういえば「生野区ものづくり百景」に掲載されている紡織機器バネ工業さんは、そのパンタグラフに集積された電気を車両で使用できる電気に変換するインバータ装置の特殊な部品を作っているらしい…..町工場がそういうパンタグラフの技術を支えているのがカッコエエよね。ちなみに木村工務店はこんな感じで掲載されている。

その地鎮祭があった同じ夕刻に「ものづくりセッション」があった土曜日。左横に積み上げられているのが、その地鎮祭の現場で使う古材で、この古材と新しい木材とを組み合わせた斬新な木組みを造るという。その設計も3つの設計事務所がチームとなって設計している状況で、木村工務店の大工も、かつては二人とか三人とかの組制だったが、最近は一人だけの独立した棟梁として仕事をし、それぞれが、その時々の現場に応じて、チームを組むチーム制に変わった。この現場の複雑な組み合わせの木材を、手加工をするための大工チームが編成される予定。いろいろなモノとコトが複雑多岐に組み合わさり完成を目指す建築は、どんな姿になるのだろうか…..と、楽しみでもあり…..施工がうまくできるかどうか心配でもあり…..ていうのが工務店的ブルースだとおもう。
そうそう、この日の「ものづくりセッション」は、大林縫製のオオバヤシくんが、プレゼンターで、その発表中に、自分の会社を支えてくれている、技術を持った外注の職人さんの話をしている時、感極まって、涙をこらえながら語るシーンが続いた。会社の栄枯盛衰のようなものを語りながらV字回復しようと、新たなコトに挑戦している姿と、ちょっとした悲しみをどこかに携えながら、それを喜びに変えていこうとする発表者の、その声のトーンが「ブルース」だなっておもった。町工場というのは悲しみと喜びとが交錯するブルース的なのだ。と感じた「ものづくりセッション」だった。

東京の椿山荘(チンザンソウ)に行くコトになった天皇誕生日の日曜日。その日の東京は、とっても穏やかな日和で、何件かの結婚式の祝福ムードに包まれ、それを助長するかのように雲海が演出されて、とってもエエ雰囲気だった。「雲海という自然現象を東京雲海では”ダ・ヴィンチ・ヘッダー”という雲や霧を作り出し噴出する装置で実現している。具体的には、庭園内に配置した複数のノズルから、霧や雲と同じ約10~20ミクロンの細かい水の粒子を均一に噴出させることで創り上げている。“ダ・ヴィンチ・ヘッダー”は”株式会社いけうち”の製品である」と書かれてあった。きっとミストシャワーの凄い版なのだな。いけうちさんは霧の可能性を追求する大阪の企業なのだと初めて知った。写真右上にある3重の塔は、移設して100年経過するらしく、芯持ち柱のない構造だという。きっとその移築過程に携わった大工さん達は、苦しみと喜びを体験したのだろうな…..。
椿山荘にて、次男とフィアンセとそのご両親とうちの夫婦6人で食事を共にした。その会話の中で建築的な話があって。ご自宅を住みながらのリフォーム工事をした時に、その時の大工さんが、職人さんとしてとっても良くて、リフォーム工事が終わると、大工さんロス、職人さんロスで寂しくなりました…..って仰った。きっとその大工さんは、毎日緊張感を保って大工工事に尽力しながらも施主の前では穏やかな職人さんとして接することが出来る人柄だったのだろう…..その工務店さんでイベントがあるそうで、その時にはその大工さんに会いに行こうとおもっているのです…..と。そういうのって大工冥利につきるよね。その大工さん、どこかでこっそりとブルース的に涙するのかも…..。

その天皇誕生日の深夜。偶然、ワタシと次男とフィアンセの3人だけになって、タクシー乗り込んで恵比寿のミュージックバーMarthaとTrackをハシゴする。きっと大阪人はだいたい声が大きいのだろうね。Trackで2回ほど注意されてスミマセンと頭を下げた。きっとその日のバックにはブルースロック的な音楽が掛かっていたからだし、そういうちょっとしたブルース的な気分になる土曜日と日曜日の印象を受けて、ワタシの会話は、しゃがれ声で張りがあったのだろう…..。