ハイカーの集う加工場くん
「ハイカーハングアウト」というハイカーが集まるイベントが開催された土曜日と日曜日。木村工務店の加工場をどのように使うか…..を考えた時、何よりも、大工のための手加工ができる作業場として活用しよう…..としたのが、30年ほど前の出来事で、それまで、この空間のほとんどを占領していた木工機器を売却し、空間=スペースとして残すことにした。そのお陰で、地元の清見原神社の増築工事をこの加工場で1年かけて手加工する作業場として活用することが出来たし、木材加工がプレカット加工が主流になった現在でも、手加工が必要な木組みも一定数あって、そのほとんどは、プレカット工場に専属する大工さんによって手加工されるのだけれど、木村工務店では、そんな部分をこの加工場に引き取って、うちの大工さんによって、手加工することにしている。何よりも手加工の技術を後世に伝えるためにも大切の仕事だと考えている。
その手加工する時は、この写真にあるような「馬」を使って、その上に木材を乗せ、大工さんが手加工をする。そのためになくてはならないのが、この「馬」で、高さとか、長さとか、重さとか、その時々の大工さんの好みによって作られて、代々引き継がれたり、新しく作り直したり…..と、大工を抱える工務店の必需品だとおもう。その「馬」が、ハイカーたちの椅子として、とっても重宝された今回のイベントだった。
土曜日は4人のハイカー達によるトークイベントで、アメリカの3大トレイルルートを走破した日本人は10人ほどらしいが、そのうちの5人がこの会場に集結しているらしく、4人のロングトレール経験者のそれぞれから語られるトークは、その経験値を等身大で語るがゆえでもあるのだろうが、とっても興味深く、オモロイトークイベントだった。建築的な関連性からピックアップするのなら、GPSや携帯電話を使わずゴミ砂漠を歩く事を自分自身のルールとして旅する奥村くんは、いま自分が立つ位置関係を、出発した町からの距離と四方に見える山々をスケッチブックにスケッチし、その山々に名前を付け、神話として、物語を作って、そうすることで、自分が戻る方向を記録に残すのだという。
それはまるで、平面計画がされた、もしくは、途中の段階の平面計画で、平面上の自分の立ち位置とその前方の窓や、その建築的関係性をスケッチとして表現するのと似ているし、この旅で、生きて帰るために、出発地点に戻る場所をしっかりと記憶に留めるための作業が、スケッチだそうで、書くことによって記憶に残り、その記憶を喚起するために、たまに見返すことがあるぐらいだそうだ。そして神話として、山々を命名し、その関係性を物語として構築することで、記憶として残るのだという。それゆえ、私の命を繋ぐ山々が、神だとおもえる時がある…..と、その後のBarタイムでの個人的会話で語ってくれた。
全国各地から木村工務店の近くにあるゲストハウスに泊まりながら多くのハイカーが集まってきた「ハイカーハングアウト」なのだけれど、木村工務店の加工場史上、初めての出来事があって、このイベントのスタッフの数名は、この加工場のコンクリートの土間の上に、建築の外壁に使う、透湿防水シートのタイベックを敷いて、寝袋で宿泊をした。ハイカー達って、どこでも気軽に寝れて凄いね!超軽量のキャンプ道具の進化があっての事でもあるが、きっと、加工場くんも、ビックリしているとおもう。
今日の日曜日は、中古グッズの販売をするマーケットとして加工場が活用された。木村工務店の加工場くんにとって、驚きの二日間だったとおもう。