東京の夜
寒い日が続いた先週。ようやく暖かくなったこの土曜日。そしてようやく庭の桜が蕾になった。春休みが始まっても家に閉じこもっていたmagosが、この陽気に誘われ庭に出て、何をするのかと見守っていたら、あちらこちらの棚から道具を取りだして、キャンプをするのだという。子供というのは何気にさまざまな出来事を観察しているのだな。ドリップコーヒーを煎れるまねごとをしたり。なかなかお見事なキャンプサイトだった。
そして久しぶりに本を読んだ土曜日だった。「東京都同情塔」そういえばここ数年芥川受賞作を読んだことがない。あの国立競技場で中止になったザハ案が、あの場所に建築された。という想定にとっても惹かれた。大阪人の私からすると東京のメンタリティーに理解が及ばないところがそれなりにあって、あの神宮の杜とその木々の高さとの調和を守るコト。の大切さを聞くと、なるほどな。とおもえたが、怖い物見たさという衝動があって、あのザハ案が建築された東京の光景を見たいがために東京に行ってみたい。とおもう大阪人の私もいた。先週、久しぶりに東京に行ったが、どうしても隈研吾の国立競技場を見たいとまでは思えなかった。いやもちろん、機会があればいつか訪問したい。そうそう、私は伊東豊雄の国立競技場案がタイプだったけれど、決定にはさまざまな大人の事情が絡んだのだろう…..。
先週のブログに書いた東京での結婚式は、お昼のフルコースだったので、午後3時過ぎにお開きになった。長男は多くの友人たちとの2次会を楽しみにしていたし、奥方と長男奥方とmagosは4人でゆっくり東京の夜を過ごすという。そんなこんなで、次男と二人で、東京の夜を過ごすことになった。
まずはサウナに行って心身をほぐそうということになって、次男チョイスで、赤坂の「サウナ東京」に行く。流石に土曜日の午後4時頃は満員だったが、携帯に送られてくる順番待ちのシステムにあやかって、赤坂のまちをブラブラ散策しているうちに、順番が来た。若い人たちでいっぱい。おっさんは私と2、3人だけだった。そうだ、これ、商店建築のサウナ特集で見たサウナだと思いだした。外気浴がないサウナの休憩室をいぶかしく感じていたが、適正な温度調節の効いた広々とした休憩室は案外快適だった。生中飲んで唐揚げ分け合って午後7時。
20歳代頃に東京に行く機会があると、新宿にあるDIGとかDUGとか木馬とかさまざまなJAZZ喫茶によく行った。音楽目当てでもあるが、オーディオシステムとインテリアデザインに興味があった。で、以前ブルータスに掲載されていたミュージックバー「BAR MARTHA」の記憶が焼き付いていた。音楽とオーディオとインテリアデザイン。次男の合意を得たかどうか、私チョイスで次男をタクシーに押し込んで恵比寿に向かう。入り口で、写真撮影とSNSに投稿をしないで欲しい。小さな声で喋って欲しい。とレクチャーがあって、カウンター席に案内された。
カウンターと背面スピーカーまでの距離がたっぷりあって、カウンターで聴く音質と音量が丁度良い。いわゆるカウンター内の作業スペースがたっぷりとってあって、背面の、お酒のボトルデザインを眺め、マッキン275の真空管アンプの台形フォルムのカッコ良さを眺め、タンノイのオートグラフの巨大で上品なスピーカーデザインを眺め、何時間も聴けそうな優しい音を聴く。音楽を聴く、ちいさな声で会話をする、他の会話が聞き取りにくい、その音量バランスが絶妙なのだろう。スタッフの方々のお酒を作る所作を眺め、シルバーヘヤーの女性DJのレコードを掛ける所作を眺める。その日は、私の持つレコードの中で、この2つのアルバムの順番がお気に入りだった。そうそうバーのマーサという名前はトムウェイツのクロージングタイムのなかの曲名だったのだな。いまでもたまに聴くし、そういえば、六角精児の飲み鉄本線にもトムウェイツはよく掛かるよね。
音楽聴きながら次男とさまざまな話をした、東京の夜。大阪に帰って、あの新郎新婦からお礼の電話が有り、東京での夜の話をすると、偶然にもそのバーで、新郎新婦はデートをし、結婚を決めたらしい…..しらんけど。