「脳に騙されず脳を騙す」

雨降って、落ち葉がいっぱい。美しい。でも掃除がタイヘンな季節だな。

「TJAR2022」は「トランスジャパンアルプスレース2022」の略らしいが、そのレースのドキュメンタリー番組「激走! 日本アルプス大縦断 2022」がNHKBSで2週間に渡って土曜日に放送されたのが先週と先々週のこと。前編を何気に見ると感動的で、長男家族と一緒に食事をした時にその録画を見せると、一緒に感動を共有できて、その後編を皆で一緒に視聴しようということになった。それぐらい小学生からシニア世代までの幅広い年代層を虜にする魅力があったのだろう。

オリンピックとかワールドカップとかそんなのは家族一緒に視聴したことがあったが、番組が始まる前に、うちの家の居間のテレビ前にゾロゾロ集まってきて、それぞれの居場所に座って一緒にトレイルランニングのスペシャル番組を視聴する。なんていう現象はとっても珍しいことだとおもう。そういえば、うちの居間に長男とその家族や次男が集まってくると、奥方や私も含めて、それぞれにとって居心地の良い居場所がなんとなく発生し、それぞれの定位置ができたりするのが、建築の現象としてとっても面白いなぁとおもう。

そのレースで、圧倒的なパフォーマンスでチャンピオンになった土井選手は、ヘッドライトにマイルストーンという製品を使用していて、いまそのマイルストーンの倉庫と事務所とプレゼンテーション的な場所を新築工事中で、土井さんは、そのアドバイザーも兼任しているらしく、そんな「縁」が応援度を強めていたのだとおもう。「一日一アルプス」というコトバが生まれたらしいが、一日で北アルプス、一日で南アルプスを越えたという。

運動能力としての圧倒的パフォーマンスが凄いのだが、彼が発するコトバも示唆に富んでいて、「” 脳に騙されず、脳を騙す “これまで経験してきたウルトラディスタンスで学んだことのひとつ。疲労が重なったとき、脳は防衛反応で身体を止めようと傾く。睡眠はそれをニュートラルに戻す。短時間の睡眠だけでも回復する(気になっている)のはそのせいだ。全て仮説だけど。だからウルトラディスタンスで意識することは、脳と上手く付き合うこと。限界を超える方法の1つと考えている。」なんてとっても魅力的なコトバだな。

「よく「長く動き続けられる動物は人間くらいだ」と言われていますよね。つまり人間はいい意味でも悪い意味でも、日常では脳で行動を制御してしまう。その制御装置を緩めれば、人間にももっと可能性が生まれるのかなと思います。あくまで持論ですが。」面白いコトバ遣いだなぁとおもう。そういえば「痛みが心の起源」というタイトルのNHKBSのヒューマニエンスという番組を視聴したことがあるが、「「痛み」は、もっとも原始的な感覚だ。このシステムこそ、実は「心の起源」なのではないかと研究者は言う。例えば、痛みは意外といい加減。脳の受け止め方次第でその感じ方が変化する。痛みは傷ついた患部ではなく、脳が生み出した、自身の危険を伝える警報信号だからだ。脳が生み出す感覚のため、失恋などで心が傷ついたときも、体が傷ついたときも脳は同じ反応をしていることもわかってきた。痛みと心の不思議な関係を妄想する」なんて番組説明にあったが、双方に共通する何かを感じる。

番組終了後、小学生低学年のマゴが父親に向かって、お父さんも出場したらどぉ!と軽やかにコトバを発し、父親がその言葉に詰まりながら、そんなん絶対無理やわ!と切り返すものの、マゴは腑に落ちず、誰もが挑戦できそうなイメージと憧れを抱かさせる、そんな土井さんの姿と他の参加者の人間の限界を超えていくパフォーマンにワタシも感動したが、それは「身体と脳と心の関係性と付き合い方」の実験を見ているようでもあった。

そうそうテレビ番組上ではなくネット上で知ったことだが、このレースのために荷物を軽量化するための道具と食料のチョイスと工夫にも興味深いところが沢山あった。建築という建物のスピーディーな完成を目指す「現場監督」にとっても参考になるような気がするなぁ。