「右手」
生野区小路のまちに地車の鐘や太鼓の音が一日中鳴り響く秋祭りの日曜日。コロナ禍が明けたファンファーレのようであり、まちの活気を取り戻す音色のようにおもえた。道を挟んだ会社と家の前に地車が停止する。日曜日なので社員は休みだったので、夫婦二人だけで道路にでて「さぁ打ちましょ!」の掛け声とともに皆で一緒に大阪締めをする。昔は近所の沢山の子供やおじいちゃんやおばあちゃんが道に出てきて地車を見送ったものだが、ほとんど人の姿がない昨今。ちょっと寂しい。地車の鐘や太鼓の音色と威勢の良い掛け声が響き皆で大阪締めで安全無事を祈る「まち」として活性化してほしいなとおもう。
↑ そうそう木村工務店の塗装工事を担ってくれている山本塗装のヤマモトさんが日曜日なので大友の地車を曳いて、和やかな笑顔を振りまいてくれた。それにしても大きな右手だなぁ。この手で数々の家や店舗の塗装をしてくれているのだな。
「手」繋がりなんだけど、月曜日の祭日、高校時代の同級生イナモトくんのお誘いで金沢の「小松弥助」で鮨を食す。ほんとうに予約のとれないお店だという。カウンター席越しに90歳を越えたという大将が握るフワッとやわらかいシャリの鮨が右手の手の平にのっかり差し出される。ちょっと緊張して力が入ってシャリを握りつぶしてしまわないかと心配しながら手渡しで受け取とると、大将が右手親指を立ててグッドサインをする。美味いでぇ!というサインかとおもったらありがとう!という感謝のポーズだという。口に入れフワッとした旨味を堪能してワタシも右手親指を立ててありがとう!のグッドサインを返す。
カウンター越しに眺めるネタを切る右手の包丁さばきに絶妙な入射角とリズム感があり左手の柔らかく鮨を握るリズムも加わるとその全身から繰りだされる一定のリズム感に見惚れてしまう。食べ終わって若い板前さんと会話しながらそんな印象を伝えると、おまえリズム感が悪い!とよくおこられるのです。っと笑顔で答えたくれた。その時、2年前に他界した沖棟梁が鋸を挽き鑿を玄翁で打つ時のリズム感を大切していたことを想いだした。沖棟梁が加工場の一角に座り込んでひとりひっそりと「鋸の目立」てをしていたその時の心地良いリズムとその所作がフラッシュバックした。
お店にはピシッとした空気感があるものの緊張感が漂うわけでもなく皆が和やかに会話しながらリラックスした笑顔でお寿司を食べ幸せな気分にさせてくれる、その老齢の域に達した職人仕事の在り様を垣間見た。帰りがけは、板前さんがわざわざカウンターから出てワタシのカメラを持って、大将も加わり板前さんと一緒に皆で「はい弥助」とコトバを発しながら親指を立てて皆で記念撮影をする。そんなちょっとチャラいイベント感も楽しみながらできる高級寿司店にある種の凄みを感じた金沢の昼食だった。そうそう夜は営業せず朝から3交代制の営業で午後5時過ぎに終了するという。営業スタイルも現代的なのだ。