定期講習
セミが大合唱する季節。そういえば、うちの庭では一週間前の土曜日の朝、一匹のセミが静かにソロ演奏を始めたのが夏を告げる一報だった。前日の金曜日に元総理が銃撃されて亡くなるという衝撃的な事件があった翌朝だったので、もの悲しいファンファーレのように聞こえるのが不思議な感覚だったが、でもなんというか、妙にエモーショナルになりすぎるのも良くないよねぇっていう一喝の鳴き声のようにもおもう。一週間たつと何十匹もの蟬でハーモニックでちょっとうるさく感じる合唱が庭に響いている。
家で過ごす海の記念日。振り返ると2013年の海の記念日から昨年2021年の海の記念日までの9年間連続で、しまなみ海道の生口島にある輪空という宿に泊まって、そこで出会った友人達と自転車で島々を巡るというのがルーティンになっていたが、今年は行けなかった。一ヶ月ちょっと前の日曜日に奈良で自転車に乗っていて、川沿いの自転車道車なんだけど、道路を横断する時に、車との交通事故にあって、左肩甲骨を損傷し、三角巾の生活を余儀なくされた。幸い右利きなので生活と仕事はなんとかフツウっぽくこなせたが、服を着替えたりするのは奥方の多大なるお世話になった。ほんの少しエモーショナルになる時もあったが、淡々と日々のルーティンを守って過ごすコトにした。いまはそれなりに回復基調で、リハビリが始まって、今日は朝から銭湯に通ってリハビリをしながらゆったりと過ごす日曜日となった。
そんなこんなの理由もあるので、先週は一級建築士の3年ごとの定期講習をオンラインで受講することにした。コロナ禍になって、オンラインによるセミナーや講習がフツウのコトになり定着してきたのが進化だなとおもう。郵送されてきたテキストを見ながらパソコン上で講義を視聴するのは気楽で良いし講義時間を小分けに視聴できるのも良いが、試験をどうするのかが、ちょっと不安だった。
事前にこんなスタイルでしますという説明もなく、いきなり定刻にzoomで入り、試験官の方のzoom画面上からの監視のもと、パソコン上に別画面を立ち上げ別サイトから試験用紙を開いて設問に一問ずつ答えていく。紙なら迷う問題は飛ばして後回しに簡単にできるが、パソコン画面上は次へ次への画面移動が基本なので、そういう融通が利かない。配布されたテキストを閲覧することが許されているので、あっちこっち本をめくるのだが、会社でリラックスしすぎているからなのか、歳のせいなのか、なかなか目的のページに辿り着かないワタシ。講習試験会場で一日缶詰で集中した方が良かったような気もする…..。
テキストのなかで最近の法規の改正や建築の動向などが解説されているのだけれど、そのなかで興味をひいたひとつは「木造」というのが、かなりクローズアップされて解説されているのが興味深かった。木造を扱う工務店の立ち位置としては、専門学校や大学で木造を教える授業がもっと増えれば良いのにとおもう。
もうひとつは、「地球温暖化、生物多様性の減退、破棄物問題、大量生産・大量消費の従来型の社会システムから、持続可能な社会システムへの転換」「スクラップアンドビルド型から建物をきちんと維持管理し、長持ちさせ、愛着を持って使っていくストック型の社会への転換」「建替という選択肢でなく耐震改修や設備の更新など維持保全を前提にした対応」「建物・街並の歴史性の継承という観点」などが建築界に求められている。とあらためて明記されているのが目を引いたし、「空き家」なんていうコトバが重要なキーワードになっているのにも感じ入った。
「いいものを作って、きちんと手入れして、長く大切に使う」というテキストのコトバに接すると、工務店としての今までを、社員と一緒にもう一度見つめ直す機会だな。とおもえた定期講習だった。