猛暑日

猛暑日が連続する週。気温35℃が基準だとおもっていたら、もはや40℃を越えたかどうかがニュースの話題になる昨今。朝から30℃近くになると木村工務店の職人さんたちは早朝から事務所でクーラをガンガンかけて体を冷やしてから現場に出て行く。職人さんの多くが空調服を身にまとい仕事しているので、人の気配というよりロボットの気配のようにファンがブワーンブワーンと回転する音とともに近づいてくる感じが、近未来映画的な感覚だなとおもう。

それと近未来小説的感覚になったのが、「エネルギーが安定的に供給されない」という事態。火力発電所が停止していたのだと知る。「安定的に」「安いコストで」「環境に負荷をかけず」「安全に」電力を供給するというのが、カンタンなコトではない課題らしい。供給側と需要側のエネルギーバランスについてようやく真剣に考えるきっかけになった今年の猛暑日。

住宅の省エネの課題は、これまで「断熱等性能等級4」が最高だったのが、ZEH相当といわれる「断熱等性能等級5」というのが新設される。平成28年度基準の家より30%ほど冷暖房エネルギーが省エネになるらしい。化石燃料、原子力燃料、水力・太陽光など自然から得られるエネルギーを一次エネルギーというが、住宅で消費するエネルギーを、この一次エネルギー消費量に換算した「一次エネルギー消費量」という単位があって、基準より10%低い「一次エネルギー消費量等級5」から20%低い「一次エネルギー消費量等級6」が新設される。冷暖房機などの設備機器や家電の消費エネルギーを20%削減する新築が政府の目標値になる。この夏の電力消費を15%削減目標としましょうというのは節約する節電だが、一次エネルギー消費量等級5の家を新築すると、意識的な節約節電せずとも、フツウに快適な日常生活を営むなかで20%節電されているということになり、そういう家づくりに現実感が伴ってきた感じがする。

「まちのえんがわ」の近くに住んでいたデザイナーの通称サッチーが若くして病気で亡くなって一年近くになる。まちのえんがわワークショップにも多大な貢献をしてくれた女性で、そのお母さんがうちの家に尋ねてこられた。あれやこれやと想い出話をする。といってもおもにうちの奥方がサッチーを病院に送ったりしたことがあって、女性同士の会話の中にワタシが少し割り込んで入った感じ。亡くなってから実家のある金沢で開いた個展は反響をよんで全国から多くの人が見に来られて想定以上にポストカードを買って頂いたという。猛暑日のお昼、テーブルの上にポストカードを並べる。その中に、亡くなるほんの数ヶ月前に書いた「妄想春パフェ」という作品があって、観た瞬間、あっ〜食べたい〜爽やかになりたい〜という気分になって舌に涎が湧いてきそうな感覚に陥る。それとともに「はかなさ」「あはれ」みたいな日本的感覚も湧いてきて、お母さんが目の前に座っておられたからだろうポストカードの中にサッチーが生きてるような感覚になった。

あっそうそう「妄」って「亡」+「女」なんだと気付いた。妄想を誘ううだるような猛暑日だった。