「チャレンジ」

住宅相談会があった日曜日。赤ちゃんと3歳のお子さん二人連れで来社された若いご夫婦は、大阪市内のある特定の密集市街地で、中古住宅を購入しリフォームをしたいというご希望だった。ライフスタイルとして車は所有するつもりがないので駐車場は必要なく、2階建ての長屋でよいのだと仰る。再建築不可の一戸建て物件にも興味を持たれて、土地を含めた中古住宅の購入価格帯を1000万円以下に絞り快適なリフォームをする予算感覚だった。

現代的なチャレンジだなぁ…..とおもう。都会での土地を購入してからの新築費はますます高騰する世の中になって、子育て世代がファミリーで住める2LDK以上の賃貸住宅の月額もそこそこの金額で物件数もかなり少ない。密集市街地の「空き家」になっている中古住宅を購入しリフォームして、都会で自分たちなりのライフスタイルを楽しみたい世代の、切り捨てるライフスタイルのひとつが車を所有するというコトで、そんな若い世代でないと、お気に入りの密集市街地の「空き家」は再活用されないだろうな。とあらためて考えさせられた。乳母車を押しながら子供の手を引いて、「オンデマンドバス」を行きと帰りに予約して弊社の相談会に参加されたスタイルからしても、「カッコエエ」とおもう。

堀江謙一さんがヨットで太平洋横断を最高齢で達成されたホームページをしげしげと眺める。「カッコエエ」な。若い時は最年少で太平洋を西宮からサンフランシスコにヨットで行き、最高齢でサンフランシスコから西宮に戻る。ホームページには日々のリアルタイムのヨットの位置が更新され、リアルタイムの航海日記にリアリティとハートがあってついつい読んでしまう。「精神と肉体は完全燃焼しましたが、青春まっただ中でこれからも頑張ります」と先ほどテレビで視聴したインタビューで答えておられた。建築家の安藤さんや秋山さんも同じような80歳前後の世代で「チャレンジ」し続ける姿を皆とシエアーする様子に刺激を受ける。

そうそう、堀江さんが日記のなかでアマチュア無線による交信が楽しみのひとつであると仰っていた。ワタシも中学2年生の時に免許を取得して高校生2年生頃まで楽しんで、長期の中断があり、30歳前後に2年ほど復活したが、いまはまったく休止している。堀江さんの航海中に交信できたら楽しかったかも。

↓ 今は残骸のように残るキットで組み立てたミズホのアマチュア無線機

SNSの世の中になって不特定多数の方々と繋がりを持つのにアマチュア無線は前時代的だが、インターネットが繋がらない洋上と繋がる面白さがあり、文字でなく声「voice」で繋がるのが面白いのだとおもう。それに大気の磁気現象などに交信の影響を受けたりするのが面白かったりして、中高生の頃に楽しんだ50MHz帯では、普段は関西圏ぐらいしか通信できないのに、5月から8月頃の夕刻になると時折Eスポ(スポラディックE層)という現象が派生し、突然、北海道と交信できるようになる時間帯が数時間続き、その現象が面白くて、学校から早々に帰り、北海道と繋がる楽しみを追いかけた時期があった。きまぐれな「未知との交信」という感覚が楽しかったのだとおもう。

↑ そういえば、先週。施工した「コトバノイエ」で、施主の加藤さんが主催する、ポエトリーリーディングのイベント「the night of voice 05」が催され、夫婦で参加する。飲食のあと、8人の朗読者による「voice」を聴く。それぞれが題材にした朗読による「voice」に、それぞれの経験や生き様が聞こえてくるような感覚が面白いし、夕刻になって、それぞれの「voice」によって「静けさ」を体感する感覚は、芭蕉の俳句のような世界でもあり、「無」から生ずる「voice」のようでもあって、老子的や禅的な感覚も楽しんだ。コミュニティー的な雰囲気を含めてカトウさんのチャレンジングな「the night 」だった。