「領土問題」

3月になると一気に春らしくなって、桜が近づいてくる感覚がちょっと嬉しい。

そうそう!家庭内にも「領土問題」がある。
うちの家ではリフォームした時にリビンルームから半島のように突き出た1畳半ほどのワークルームを造った。古い呼び方では書斎。そのスペースの右手の窓は南面し東西に走る道に接しながら街の動きが感じられ、外の世界と境界線上に接する領土のような感じ。左手の窓は中庭に面して、奥方が生ける鉢植えの植栽と空が切り取られて見え、ちょっと内省的な感覚なのかな。で、そこはワタシのスペースとして設計当初に奥方の合意と快諾を得て、それまで持っていたレコードとかCDとかオーディオ機器とかアマチュア無線機とかWi-Fi機器とかそんなのの保管場所にもなって、ワタシにとっては湖に面するリゾート地的でワタシ寄りの文化圏であった。

そんな経緯があったので、リフォームが完成した当初からその場所を優先的に専用し、途中にモニターを買って、会社に持ち込むノートパソコンと接続するスタイルで、このブログはそこで書いていたし、机の周りのステーショナリーとか置き方はワタシ好みになっていた。時々奥方とシェアーしたりもしたが、古い家の2階に、そこもリフォームをしたのだけれど、奥方は自分専用の場所を持って机があり写真や絵などを飾って奥方好みの文化圏としてそこを完全専用し、奥方的山岳リゾートのような感じだった。ちょっと付け加えると、奥方は祖父から受け継いだ保険業務をやっていて、保険のおばさんでもある。

とはいうものの、ワタシのその半島のような場所の使用率は日曜日を中心とするだけで平日の夜にごくごくたまに使う程度の別荘地感覚だった。そんな平和な日々に、あのパンデミックが発生した。突然、在宅勤務にオンラインという流行が押し寄せてきて、その半島のような場所の使用率は格段に増えだした。それとともに、その快適そうにワークしている場所に密かに目を付けていた(ような気がする)奥方は、このパンデミックによるオンライン会議とやらのブームに乗っかって、ワタシの場所に進出してきた。ワタシもそれは全然「イヤ」でなくむしろ歓迎し協働でシェアーする喜びを感じていた。

その半島でのオンライン会議を中心とした奥方の使用率が増加するにつれて、奥方の赤い色のノートパソコンが常設的に置かれるようになり、紙の書類やボールペンなどのステーショナリーがどんどん増え、ファイリングされた保管書類が置かれだすと、その半島の文化が様変わりした。建築をやっているひとあるあるだとおもうが、自分好みのシャープペンとかステーショナリーにコダワリがあったりして、なんか机の上の感じが好みと違うなぁ…..なんて。

ワタシが使用する時は、まず机の上を自分好みに片付けることから始まり、そのことでおもわずグチのような叫びが発生してしまうと、奥方との間で小競り合いが勃発しだした。40年近くの共同生活の経験値から大事に至らないような和解方法をお互いに駆使しながらも、気が付けばほとんど奥方の場所にワタシが間借りしているような状況になってきた。もちろん奥方も気を使ってレコードとかCDとかの街並はそのまま保存してくれて、ワタシの文化と奥方の文化が融合されたような雰囲気は演出してくれていた。

この感覚があっているかどうか。オトコのワタシの武器は大陸間弾道ミサイル程度のものだが、オンナの奥方の武器は原子力爆弾クラスだとおもう。一度発射されると全てを破壊し後遺症も残り世界が終わる。熟年になるとたまにそんな核保有国であることをチラつかせるし、いつでも発射する用意があるのよぉ!みたいなニュアンスの言動が抜群のタイミングで発動される。それに反発し対抗して、我が領土を守るためにワタシの正義を盾に武力行使にでて、この場所を奪還し元の場所に奥方を追い返すというやり方もあるのだろう。

国譲りをすることに決断したのが昨年の12月初めだった。古代日本の方法論に学び、その半島のようで快適な場所は奥方に譲ることにした。その替わりに、ダイニングの大テーブルの端に常設のパソコンを置きワタシの居場所として保護地区になるよう交渉と協議に入った。数ヶ月前に出たアップルの「iMac」の背面が、デザインされていてその場所に置いても違和感なくオシャレに感じる雰囲気があり、奥方好みの色もあって、アップルのサイトにあるバチャールで設置した雰囲気を検討し合いながら、黄色のiMacなら奥方が出資してくれることになって決着した。

いま、奥方はその半島のCDやレコードの街並は活かしたまま自分好みに独占している。その日以来覗き込むことがあってもその場所に座ったことは一度もないが、奥方の使用率が高く快適で楽しそうな雰囲気が嬉しい。ワタシは新天地での使い方を工夫して新しい文化を生み出さそうと模索する日々を楽しんでいる。昨年末から今年に入って、このブログはこの地からアップロードされている。

そんなこんなで、穏やかな春でありますように。