ピアノ
BSの「駅ピアノ」とか「空港ピアノ」とかをたまに視聴する。うちの奥方は、いつかあそこに出演したいというが、いまだに家でピアノを練習する姿を見た事がない。それぞれの国や都市によって微妙な特徴と違いがあって面白いが、最近では「弘前」の駅ピアノが案外良かった。弘前って文化都市だなっておもった。そういえば、「世界TAXI」も面白い。映画「タクシードライバー」の名場面を連想させるようなドラマがあって楽しい。その中では、ローマのタクシードライバーになってみたいとおもった。
YouTube上でも駅ピアノ的なやつがあって、「ラ・カンパネラ」なんて演奏する映像があり凄いなっておもっていたら、以前視聴した関連で、あの盲目のピアニスト辻井伸之の「ラ・カンパネラ」のリンクが出て来た。圧倒的にレベルが違う。関連する辻井伸之のさまざま動画を見る。ニューヨークのセントラルパークの野外音楽堂で演奏された映像など、ちょっと感動的で、アンコールが終わって観客のインタビューで、男性が、ロックンロールだ。と語ったコトバなど印象的だった。その場に居て一緒にその音を共有したかった。日豪友好の演奏で、おもわず小学生が合唱するシーンなど、グッとくる。
世界的なピアニスト9人による「ラ・カンパネラ」の比較動画も関連付けられて視聴すると、同じ曲でも、プロによってこんなに演奏が違うものかと驚く。辻井さんは最後の動画出演者で、他のひとと音楽的に何が大きく違うのだろうか…と考えさせるほどの印象深さがある。右手の小指の音色と響きがコントロールされて美しいからなのだろうか…とか。日本的な間が存在するからなのだろうか…とか。「音色」や「響き」や「リズム」や「和音」を楽しんでいる雰囲気があるからだろうか…などなど。神社の巫女さんが神さまに奉納する舞「神楽」の際に手に持って鳴らしていた神楽鈴(かぐらすず)を本坪鈴(ほんつぼすず)というらしいが、神社で神主さんからその鈴でお祓いを受けているような、その音色にすら聞こえてきた。
建築家の秋山東一さんは、常日頃、工務店の新築住宅は、ひとつの「型」を持つべきだ。と私たち工務店に説いている。確かにワタシもそうおもうようになってきた。骨格の良いバランスのとれた構造と開口部と階高と屋根勾配の住宅建築の肉体美的型をひとつの身体にして、その身体にさまざまなファッションを身にまとうように、その骨格の上にそれぞれの住まい手に合わせて微妙に個性的な装いがある建築。なんていう建築的イメージと共通するような9人による演奏の比較動画だった。
数十年前に長屋をリフォームして居間兼オーディオルームを造った。かつてワタシ達が住んでいたその家は、いま、長男夫婦が住んでいて、その居間のオーディオ装置類を長男がバージョンアップした。数年ぶりにその部屋で音楽を聴かせてもらう。「音楽」というより「音」を楽しむための部屋にしたかったが、ワタシが中途半端な状態で引き渡したその音響がバージョンアップされていた。
数日前からの流れに従ってピアノを中心に音を楽しむ。あの9人のラ・カンパネラもこの装置で聴くとより違いが鮮明になる。ジャズ系ばかりになるが、ビルエバンスの繊細な音色。ハービーハンコックのタッチ。マッコイタイナーの左手のギョワンギョワンとする音。セロニアスモンクの独特の間。キースジャレットの静けさ。久しぶりに心地良い「音」と共に過ごす時間は、やっぱりエエよね…。