歌舞伎。

今週の火曜日。歌舞伎のワンピースを見る。ある日、奥方が、同級生のクンメから連絡があって、歌舞伎の最前列と4列目の席が手に入るらしいので、一緒に見に行くぅ。と聞いてきた。スケジュールが空いてるなら行ってもエエけど…..と、どうしても行きたい訳ではないが、でもチャンスがあるのなら、一度は体験してみたい…..ぐらいのニュアンスで返事をすると、サイボーズで共有されているスケジュールを見て、4列15番の席が取れる日に、券を手に入れたから、その日、打ち合わせを入れたらアカンで。と念をおされた。

午後3時すぎ、家に戻り、着替えをする。どんな服を着ていくのか。男性のドレスコードがあるのか。歌舞伎初体験なので、まったく判らず、ネット調べると、なんでもエエような事が書いてあったが、女性は着物を着たり、ちょっとお洒落をするらしく、それなら無難に、ちょっと遊び着ぽい紺の薄いストライプのスーツにノーネクタイのシャツで行くことにした。相変わらず、女性は、出かける前に、バタバタして、服を着替え、これで似合っているかどうなん?!と聞いてくるので、それでバッチリエエよ!と決まり文句として応えると、ほんとに真剣に見てるん!と怒られながら、別の服に着替えたりして、それやったら、聞くなよぉ!的、ルーティーンを繰り返し、いつもギリギリかちょい遅刻が定番。

午後4時すぎ、雨の松竹座前に着くと、傘越しの人の群れの向こうに「ワンピース」の看板があり、そうか、えっ、今日見るのはワンピースなん?一瞬、初の歌舞伎がワンピースなのかと違和感を感じたが、そんな戸惑いに間髪を入れず、それより、弁当何がエエ?と聞かれたので、お任せするわ。と応える。休憩の合間に弁当を食べるらしく、弁当を注文したあと、最前列の席が取れた日は、サプライズに「ゆず」が来て歌ったらしいで、残念やったね。という。歌舞伎にワンピースだけでも驚きだが、歌舞伎にゆずが、全くピントこず、母親に連れて行かれる子供のような感じで、エスカレータに乗って、会場に入った。髪を結い着物を着た若い女性二人を連れたレオン風のスーツ姿のオジサンがいて、へぇー、そうか、こんな遊び方もあるのか。とちょっと憧れてみたりした。

4列15番の席に着くと、袋に入った雨合羽が、席に置かれてあった。全く意味不明で、歌舞伎鑑賞に合羽がなぜ必要なのか判らなかったが、着席し、奥方から歌舞伎のレクチャーを受けて、だんだん、今日の起こる出来事を少しずつ把握してきた。回りはほとんど女性ばかりで、根っからの歌舞伎ファンな雰囲気がぷんぷん漂い、というよりコンサートぽい雰囲気だった。椅子に静かに座って、開演を待つと、最前列に、先ほど見た若い着物女性とレオン風スーツのオジサンが座った。

4時30分から8時30分の4時間、休憩を3回挟みながら、圧倒的なエンターテイメントな歌舞伎に魅了された。オーソドックスな歌舞伎を見た経験がなく、いきなりキワモノの歌舞伎を見たことになるのだろうが、その歌舞伎の所作と服装に魅了された。

「歌舞伎」という芸能名の由来は、「傾く(かぶく)」という動詞にあります。この動詞には、並外れている、常軌を逸しているという意味があります。
安土桃山時代から江戸時代初期にかけて、当時の流行の最先端を行く奇抜な服装や髪型をし、世間の秩序に反して行動する人々は、「かぶき者」とよばれました。歌舞伎の歴史は、出雲の阿国(いずものおくに)の「かぶき踊り」にまでさかのぼることができますが、このよび名は当時を象徴する最先端の「かぶき者」の扮装を舞台上でまねたことによります。ここから、「かぶき」とよばれるようになったのです。

どの服装も斬新で格好良かった。こんなん考えるの楽しいやろうな…..悩むやろうな…..と製作者になりたい気分になる。舞台で見た、歌舞伎の所作の特徴的な表現は、引き抜き、宙乗り、立ち回り、六方、見得、というらしく、いま知ったが、ワンピースというモダンな内容とオーソドックスな歌舞伎の表現の融合が、面白いのだろう。あるシーンでは、宙づりになった役者と一緒に、皆が立ち上がって、タンバリンを叩いて、コンサートのいように踊った。孫のためにタンバリン買ってあげるわ!というのは口実で、奥方も、立って、そのタンバリンを叩いて、踊っていた。その曲が、ゆずなんだ。この時、サプライズで登場したら、確かに、皆、コウフンするだろうな。

2回目の休憩の合間に、合羽を着ることを促された。舞台に滝と池が表れ、役者が踊りながら、水をいっぱい飛び散らせて、会場にばらまかれた。前の席のおばさんは、合羽を着ず、水を浴びるのを欲して、水が掛かるたびに喜びの歓声をあげていた。あるシーンでは、沢山の紙吹雪が天井から舞い散って頭が白くなった。笑いもあり、泣きもあり、伝統的な表現とモダンな表現が合わさって、あらゆるエンターテイメントが含有されていて、こんな伝統的でモダンでエンターテイメントな「建築」を造ってみたいものだとおもった。

私の初歌舞伎は、マイルスディビスを知らないひとが、初めて聴いたアルバムが、クッキンやカインド・オブ・ブルーやフォー&モアーなどのジャズらしいレコードではなく、イン・ア・サイレント・ウェイとかビッチャズブリューも通り越し、オンザコーナーだとか、パンゲアだとか、そんな感じなのか。いや、ウィ・ウォント・マイルスやTUTUなのかもしれない。と途中の休憩の時間にお弁当を食べながら、そんなことをおもった。今度はオーソドックな歌舞伎を見たいものだと、素直にそうおもえた、歌舞伎な夜を過ごした。

さてさて、木村工務店のゴールデンウィークは4月29日30日の連休のあと、5月1日2日は通常営業をし、3日4日5日6日と連休です。皆さん、素敵なゴールデンウィークを!