感覚の調整
協力業者との親睦会が、61年前の2月に発足したと伝えられていて、その職人さんたちと一緒に、初午祭を、昨日の2月の土曜日に、加工場で催した。一年の運気が最も高まる日とされている今年の初午は、2月7日だそうで、弊社には、お稲荷さんがお祭りしてあり、五穀豊穣を祈る稲荷祭りを協力会社の職人さんたちと一緒に、神事と共に祈願するのが、いつしか木村工務店の伝統行事になっていて、工務店的には、沢山のお客さまに恵まれますように。ということになるのだろう。
また、この日は、木村工務店の方針を職人さんたちに伝える機会でもあって、パワーポイントを使って、説明するようになって十年以上たつが、今年は、生野産業会の新年の講演会で、高岸さんという一級建築士でもあるかたが開発した、残像メンタルトレーニングの講演を聞いて、その話のなかにあった「感覚の調整」というコトバが面白く、参加者に紹介した。
人は何かを始める時、例え大事な事でも「こんなものだろう!」と言った感覚で始めるもの。しかし「こんなものだろう」と言った結果、それが現実と大幅に違っていたらどうだろう?
自分にとって何か大事な事を始める前には、自分の中だけに流れる感覚(ベルグソン感覚)と一般社会の共通認識として流れる感覚(ニュートン感覚)の「差」を出来る限り少なくしてから始める事で、社会での順応性、また協調性や信用性が高くなる
1「モノの大きさ」や「形」の正常な感覚を調整する。
2「時間」の正常な感覚を調整する。
3「長さ」や「距離」の正常な感覚を調整する。
4「力」の入れ具合の正常な感覚を調整する。
5「方向性」の正常な感覚を調整する。
6「重さ」の正常な感覚を調整する。
7「笑顔」の正常な感覚を調整する。
なのだそうで、携帯電話を見ずに紙にその大きさを想像で書くプラクティスをやってみると、実際より小さく書くことが多く、私も1回目はそうだったが、それを2、3回繰り返すと、ほぼ実物の大きさになってきた。時間感覚も同じようで、20秒を時計を見ずに。目をつぶって計測し、20秒後に手をあげてみると、ほんとバラバラで、大多数の人は、実際の時間より数秒遅れる。長さも21cmの長さを感覚で書いてみると、やはり2、3回調整して、ようやく正しい長さに近づいた。
建築の現場でも、例えば、色の問題や素材のばらつきの問題、納まりの精度などなど、「こんなものだろう」という感覚にズレがあって、そういう感覚を、施主と設計者や設計者と現場監督や現場監督と職人など、常に「その感覚の調整」を怠ると、さまざまな問題に発展することが多い。考えてみれば、コミュニケーションやサンプルやモックアップなどによって、あらゆる状況下で、感覚の調整をする作業をしていたのだ。と気付かされるし、そういう作業を根気よく2、3回繰り返さないと、感覚は調整されないのだ。ということにも気付かされたりする。
プレゼンテーションの後の懇親会というのは、人と人が無意識的に感じている距離感のようなものを縮める潤滑油のようなものだろうし、今日のコトバを使えば、お互いの感覚の調整をする機会でもあるのだろう。笑顔を交えて穏やかに会話をしたり、時にはエキサイトしながら、感覚を調整できるのが、懇親会の良さだとおもう。ここ数年は、木村工務店の社員が協力業者の職人さんたちをおもてなしするべく、焼き鳥や焼きそばやフランクフルトやおでんにカレーなどなど、社員が作って、職人さんたちに提供する。そういえば、おでんは、うちの母が、昔から職人さんたちに振る舞っていたレシピがあって、それをうちの奥方が受け継いで、いまにいたる。そうそう、昨年からは、リフォーム工事をした、ほたる食堂のはたるちゃんに来て頂いて、美味しいお総菜を作ってもらうようになって、ちょっとお洒落な食のカウンターになってきた。
大工作業をする加工場で、懇親会を催すようになって、整理整頓や掃除の問題に始まって、カウンターを造って、建築空間としての、作業の便利さや、お客さんの居心地良さなど、照明も含めて、さまざまな空間的工夫をするようになってきたが、当初は、2月の最も寒い時期に開催するために、木造の加工場として造りの問題から、隙間風があちらこちらから侵入し、底冷えする寒さを体感して、隙間風を止める大切さを、身をもって皆で体感したものだが、それも少しずつ手を加えて改善しながら、隙間を止める作業をし、今年は、もう少し進んだ防音工事なども少し大がかりに施工した。そうこうしてくると、今度は、喚起能力の不十分さの問題が発生してきて、今年は、特に炭火焼き鳥の煙対策のため、ベッショ大工が合板で換気扇を製作し実験をしてみたり、それはまるで、最近の住宅で発生する、温熱環境の問題を学ぶ場のようであり、遊びを通じて、さまざまなこと学ぶ場でもあるのが、加工場での初午祭なのだろう。