明強敏

冷たい!寒い! ほんとうに寒い日が続く。屋根に霜がおり、庭の土が凍結し、自転車に乗る気もしない冬の冷たい日曜日の朝。

土曜日の午後3時頃から、うちの加工場で「生野ものづくりセッション」という、「まちのえんがわ」オープン当初から考えていたアイデアだが、なかなか実現出来るチャンスがなかったところ、生野区のタケダさんの働きかけのお陰で、タケダさんと一緒に、ちょっとしたプライベートな遊びとして、開催するコトになった。シューズミニッシュの社長さんをはじめとした、生野区で、ものづくりをしているさまざまな人たちや、デザイン関係の方など、ものづくりが好きなひとたちが集まって、自分たちのコトを物語りながら、あれやこれやとアイデアを交換し合いつつ懇親を深めた。

毎月19日に開催している「空き家カフェ」を含めて、人と空き家が出会ったり、モノとデザインが出会ったり、技術と技術が出会うのは、とっても面白い現象だが、なによりも、まず、人と人が出会うことがなければ、そんな「コト」は実現しにくく、確かに、目的意識がはっきりしていれば、インターネット上の出会いとメールのやり取りだけで、実現されるものもあるが、セッションというコトバのごとく、目的意識は希薄だが、何かのアイデアやきっかけを生み出したいというパッションのある人達の集まりは、人と人の感覚や好みなど、フェースtoフェースでの一期一会で、さまざまなアイデアを育む可能性があって、そんなのが、「ものづくりセッション」なのかもしれない。

そんなことを、なんだかんだ語っても、街コンというより小規模な婚活パーティーみたいな気もしてくるわけで、そういえば、日曜日の今日、「まちのえんがわ」にふらっと立ち寄ってくれた女性は、婚活デートのついでに、大阪にある父の実家の空き家をどうにかしたいという思いを持ちながら、相談にお見えになられて、婚活四方山話を交えながら、縁側的コミュニケーションを楽しんだ。

そうそう、お見えになったその時は、デザイナーのミフネさんの個展が肥後橋で開催中で、三角形だけで怪獣を描くシリーズで、三角形の掟として、①三角形は全てフリーハンドで描く事、②2色までの三角形とする事、③三角形は重ねてはならない、④Ipad miniに直接タッチペンで描く事。という制約を自ら設けながら、その中で工夫することで、デジタルのようでアナログな不思議なイラストが沢山あって、とってもカワイイので、子供達に着せてあげたく、寒いなか、マゴを伴って、イラスト展に訪れている最中だった。

その後、歩いて、マゴと、grafでお茶を飲んでいる時に、スタッフのアオキさんから連絡があって、やりとりをすると、私が帰るまでお待ち頂けるという事で、急いでタクシーで帰ることにしたが、なんと、大阪女子マラソンの真っ最中で、あちらこちらで、道路を横断する事が出来ず、なんだか、まるで、三角形の制約の呪いのごとく、隙間を見つけては、道をぐるぐる迂回するものの、やっぱり、また止められて、とうとうタクシーを断念し、鶴橋で、地下鉄に乗り換えるという、ちょっとした迷路気分を楽むコトになった。きっと、制約があると、かえって燃えて、オモロイ気分になり、サムシングエルスが芽生えたりするのだろうね。

「明強敏」というコトバを聞いたのは、今週の金曜日の生野区の防火協力会懇親会での生野消防署長の話で、大阪市の消防局では、それが局是らしく、「明るけく 共に励みて強からめ いざ立つときは敏く応えて」ということで、「先ず職員は人に接するも事に臨むも常に明るく、凡そ人である限り未完成でない者はなく、その完成への努力こそ強であり、機を見るに敏なるを要する」らしい。うちの社員や職人さんにも適応できるコトバで、建築を造るにおいても「明強敏」が、施主や設計者から求められているのだろう…..と、反省を促された時間だった。

こんな寒い日々の一期一会が、顔にあたる冬の冷たい風のごとく、刺激になった一週間だった。