授業。
関西大学の木造設計製図という授業があり、それを手伝うようになって、9年ほどになる。ここ数年は、後期の前期という2ヶ月半ほどの短い期間だが、週一回の授業があり、その3回生の履修する生徒に対して、最初の授業で、建築家で構造家のシモヤマさんによる、構造的な考え方をレクチャーする授業がある。それが、うちの社員にも聞かせてあげたいような、面白い内容で、日常の生活のなかにある構造的センスを養うための「構造的な見立て」を教えてくれるレクチャーで、そのレクチャーが今週の火曜日にあった。
以前にも、現場ブログにお書いたこともあるが、缶のスコアーといわれる、丸い部分が、左右非対称になっていて、もし左右対称なら、プルタブを引き上げた時に、左右均等に力が入って、スコアーといわれる、丸い部分の蓋が、そのまま缶の中に落ちてしまう。それを、左に対して右の円弧を大きくすることで、プルタブを引き上げた時に、左から順次に力がかかり、円に沿って右に力が移動していくので、丸い部分の右端にスコアーといわれる蓋がくっついて残ったままになり、蓋の落下をふせぐ。なんていう、日常にあるモノに、構造的な考え方が潜んでいることを学ぶ。
ピザの食べ方では、左は構造的なセンスがある食べ方で、右は構造的センスがない食べ方だという解説があって、構造的な視点だけの問題で、どの食べ方が良いとか悪いとかではなく…..、という断りもありながらの解説だったが、紙の端を手で持って、そのまま人に渡そうとすると、ペラッと下に垂れ下がって、渡せないが、少し湾曲させることで、構造的に強度が出て、垂れ下がりが少なくなり、手渡し出来たりするわけで、ピザも、食べるときに、左の写真のように無意識的に湾曲させて食べていたりするのも、ペラッと下に垂れ下がらないようにするための知恵だったりする。
折板屋根なんていうのは、金属の薄い板を、折り曲げるコトで、強度が増し、長いスパン、垂れるコトなく、施工できる、金属屋根のコトで、ピザを折り曲げて食べる、構造的な考えと基本的には同じだという、なるほどなぁっ…..という説明。
シャープペンの芯を仕舞う時に、左の写真のように真っ直ぐ立てて、慎重に仕舞うのが通常で、右の写真のように仕舞おうとすると、いくら慎重にしても、すぐに芯が折れてしまう訳で、シャープペンの芯は細いので、長さが長くなると、すぐに、「座屈」といわれる現象を起こす。真上から小さな力で、ゆっくりと力がかかると、大丈夫だが、右の写真のように斜めから力がかかると、小さな力でも、あっという間に折れる。私の解釈だが、大地震の時に1階の柱が座屈したりするのは、地震力の横からの力で、1階の柱が傾いて、その時に、2階の重い加重が上からのし掛かると、右のシャープペンのような状態になって、ポキッと折れたりする。そんな現象をイメージしながら授業を聴いた。
日常の中で、なんとなく、無意識的に、構造的な感覚に、触れていたりするのを、シモヤマさんの、こんなシャープペンのレクチャーで、喚起されたりし、そんなネタが、まだまだ、あれやこれやとあって、学生と一緒に、真剣に聞き込んだ、レクチャーだった。それにしても、構造がほんとに好きなひとが語った話を聴いた、その数日は、日常に潜む構造好きになっているのだけれど、数日したら、忘れてるね….。自分のコトを、日常的に、想起するって、いつまでたっても、ムツカシイもんだなぁ。
そういえば、関西大学の木造設計製図で、最初の年に教えた男子生徒が、設計事務所に勤め、その後、独立し、木造住宅を自ら設計した建築を、木村工務店で施工することになって、この9月に上棟式があった。そのうえ、施主の奥さんは、同じく、最初の年に教えた、女生徒で、設計事務所に勤めたが、結婚し、専業主婦として子供も授かった。設計が教え子の男子生徒。施主が教え子の女生徒。その施工。とっても嬉しい、上棟式だった。thanks!
投稿者 木村貴一 23:59分