イギリスと日本人
名古屋のコスモホームさん主催の「欧州建築視察ツアー」に参加し、イギリスとパリを旅する真っ最中。今回のツアールートは建築家の秋山東一さんが企画に参加し、スコットランドのエジンバラからグラスコー、イングランドのダラム、レスター、ロンドンと南下し、TVGでパリに渡り、帰国する計画。


イギリスの橋で、日本人が設計と施工に深く関わった橋があると知ったのは、この旅の企画を聞いてからのことで、スコットランドの紙幣にもなっているエディンバラにあるフォース橋は、日本土木史の父とも称されているらしい渡邊嘉一氏が施工に関わり、以前「風景の中の視覚的効果」というブログで書いた、ダラムにあるキングストーンブリッジは、建築家三上祐三氏が設計に関わったのだという。その2つを見る機会を得た。


このフォース橋の手前には新しく完成した斜張橋と吊り橋があり3つの橋を同時に眺められるのが楽しい。斜張橋も吊り橋も1本ずつ見ればどちらも美しい橋だが、3本並ぶと、最も完成が古いフォース橋が、最も美しく感じるのだが…なぜなんだろう…人って、より手仕事的な建造物により魅力を感じるのでは…と、そんなことを考えさせられたフォース橋見学だった.

今回の旅行では、15人ほどでのバス移動が基本なのだが、鉄道オタクでもある秋山さんの要望で、フォース橋を列車で渡ることになった。この赤い恐竜のような橋を電車の中から眺めると、列車から発せられるディーゼルエンジンの音を聴き、その振動を感じながら、赤い鉄の太い斜材が、ある一定リズムで横切り続けるという、進行方向の左手に見える斜張橋と吊り橋の景色を邪魔する鉄骨の斜材で、決して美しい光景が眺められるのではなかったが、上のネットから取得した写真を見ると、この赤い恐竜のような橋を鉄道で渡ったんだぜぇ!という身体的振動の記憶がともなう視覚的経験値に、自己満足感があって、それがちょっと嬉しい。
それはそれとして、バスガイドさんが、スコットランド在住の日本人の女性の方で、とっても流暢な解説と美しい声のおかげで、イングランドとスコットランドの様々な文化の違いを学ぶ機会になり、彼女に感化されて、すっかりスコットランドloverになってしまった…。

イングランドのダラムという町にあるキングスゲートブリッジを見学する。日本人観光客15人ほどが集まって橋の上で記念写真を撮影すると、通り行く人々は、なんで、こんな橋で日本人が記念撮影をしているのか不思議そうだった。この写真の奥に映る大聖堂が世界遺産でとっても荘厳だったが、この橋はその革新的な設計と建築技術により、イングランドのグレードI指定建造物に登録されているという。その設計に関わった日本人建築家三上祐三氏が秋山さんと同じ大学の先輩だという。通常であれば、この写真の立ち位置から大聖堂に、直線的で、最短距離で、川を横切る橋を作るところを、「風景の中の視覚的効果」を狙って、この写真のように斜めに角度を振ったという。確かに現地で見るとこの橋を横から眺められる場所がなく、この斜めに角度を振る操作がなければ、この橋の美しい構造を見ることは出来なかったとおもう。

ロンドンで自由時間があり、秋山さんのお誘いで、鈴木さんと3人で、ロンドン トランスポーター ミュージアム デポットへ行く。秋山さんお知り合いのロンドン在住の日本人フォントデザイナーの河野英一さんにアテンドして頂いた。なんと、ロンドンの地下鉄の、この写真のフォントは、河野さんのデザインによるというのだ。ダイヤモンド形の点がとってもカッコエエ! イギリスの地下鉄のフォント「New Johnston」は日本人がデザインしていたのだな…。そのあと、日本食レストランで、ラーメンをともに食べながらお話しを聞いて、もっとも驚いたことは、ウィンドウズの「メイリオ」のフォントデザインは、河野英一さんによるというのだ…。
そんなこんなで、旅の途中なので、これぐらにして、日本に帰ってから、あらためて、この旅の印象を書こうとおもう……