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住まいの設計 2001年3月号

住みたいのは
木の家

Yさんの家

設計=三澤文子 Ms建築設計事務所
施工=木村工務店
林業家の協力を得て実現した自然派の家。
茶の間と土間で床座の暮らしを楽しみます
温かな木の家で のんぴりと暮らす 終の住処です
「畳の生活が大好き。ごはん食べる
のも、お布団敷いて寝るのも畳の上
がいいなと思ってたんです」という
のは奥さま。間もなく定年を迎える
ご主人と、社会人の娘さん、3人暮
らしのYさん一家は、リタイア後を
のんびり暮らせる家が欲しい、と家
づくりをスタートしました。
家族が望んだのは、和風の落ち着
いた住まい。ナチュラルな素材を使
った気持ちのいい家で、畳の上をゴ
ロゴロ過ごしたいと考えていました。
設計は、ムクの木を上手に生かした、
温かな作風が印象的だった、という
三澤文子さんに依頼することに。
これまで数多くの「木の家」を手
がけてきた三澤さんは、家族の希望
をくんで、ムクの木と土佐漆喰を使
った自然派の住まいを提案。徳島の
スギ(TSウッド)を構造材と床、天
井に使用した室内には、清々しい木
の香りが満ちていました。
リビングはふた間続きの畳敷き、.
今どき珍しいお茶の間スタイルです勺
ここに玄関を兼ねた土間スペースを
くっつけたら、昔の民家のような何
とも懐かしい空間になりました。庭
に面した土間にはテーブルを置いて、
お家Hさまをもてなすスペースに。普
段は畳の間で床座の生活、気分を変
えたいときには土間のテーブルで、
とうまく使い分けているそうです。
どこに使用する材なのか
1本ずつ選び抜かれた徳島のスギ
訪れると、心地よい木の香りに包
まれるYさん宅。ここで主に使われ
ているのは、徳島県南部のスギ、T
Sウッドです(詳細はP58参照)。
現地の林業家たちと協力して生産
しているTS ウッドの魅力を三Z薄さ
んは、「均質な強度と製材所との信
頼関係」といいます。山で葉枯らし
をおこなった後、製材所で3か月乾
燥させたこの材は、狂いが少なく色
味がきれい。そして何より「これは
どこに使用する材なのか」というこ
とを図面から読み取った上で、厳選
したものを送ってくれるから、強度、
節目、コストなど最適なものを使う
ことができます。だからこそ三Z漬さ
んは構造材を壁で隠すことなく、力
強い木組みを見せたい、といいます。
今回は筋交い代わりの構造壁に「J
パネル」というスギのパネルを採用。
これはほミリ厚の板を縦横交互に3枚
貼り合わせたもので、木の風合いと
香りはそのままに、ローコストと高
い強度を実現。Yさん宅では一部仕
上げを省いて、木目の美しいこのパ
ネルをそのまま表しにしています。